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題名
Title

生漆,黒目漆の粘弾性

掲載文献名
Publication title
色材協会誌 Vol.53 p629-634
発行所
Publisher
色材協会
発行年
Publish Date
1980
分類
Type
研究報告
言語
Language
日本語
所蔵者
Location
京都市工業試験場
著者
Author
甘利武司・熊野谿従・阿知和宗男
概要
Summary

生漆及び黒目漆液の動的粘弾性について検討した。生漆液では、低周波領域でη’の角周波数依存性はかなり大きいがG’の角周波数依存性は可聴周波域でのそれに比べ小さい。これらの粘弾性挙動は一種のエマルションとしての生漆液の特徴,すなわち分散媒であるウルシオール中に分散する多糖類水溶液の小さい水滴が相互に作用しあい,一時的な網目構造を作ることに基ずいているものとおもわれる。しかし,この網目構造の生成は黒目の操作が進むに従って消失する。黒目工程を経て作られた黒目漆液は粘弾性挙動は低周波域では一般の高分子溶液と類似した挙動を示すが、可聴周波域ではG’,η’とも角周波数に依存しなくなる。このような粘弾性挙動は剛体棒状分子と鎖状分子の中間の挙動に対応する。この現象は早い運動に抵抗する分子の内部粘性を考えることにより説明されるすなわち,黒目操作により,生漆から水分が蒸発し,分散している水滴中の多糖類が収縮した分子形態をとるためと思われる。このような多糖類の制限された分子運動が高周波領域での黒目漆液の粘弾性挙動を特徴づけるものと思われる。

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