熱的及び力学的性質から評価した漆膜の耐光性

ウルシオールを添加して得られた漆膜についての耐候性を熱的及び力学的により評価した。生漆からウルシオールをアセトンで抽出し，これを生漆又は精製漆に加えた混合物により漆膜を調製した。この膜を屋外暴露し，一定期間毎に採取し熱的性質および機械的性質を示差走査熱量計（DSC），熱重量分析装置（TGA）および引張り試験機により調べた。その結果，暴露期間が長くなるにしたがい架橋反応が進展するとともにピンホールやクラックが生じ，強度および伸びが低下し，暴露期間が6ヶ月ないしは，600時間の日照時間で漆膜は完全に脆くなった。従って，この事は漆膜が太陽光に暴露され続けると，１年以内で漆膜としての機能を失う事を意味する。