鋼球上の塗膜付着力に及ぼす温度効果

一般に塗膜の付着性に対しては、環境条件下の水分及び温度変化が大きな影響を及ぼし塗膜の付着性を著しく低下させると考えられている。そこで、我々は鋼球表面に塗布された漆膜を常温から各温度雰囲気中に放置した場合に、鋼球との付着界面に生ずる垂直引張応力を数値シュミレートにより求めた。解析の結果、温度２３℃にある塗膜が６０℃以上の高温度雰囲気中に置かれると、徐々に引張応力は増加し、１００℃においては６０℃時の約５倍もの数値に達した。また、鋼球半径を変化させたところ、半径が小さい時ほど付着界面に生ずる引張応力は増加する結果となった。従って実用的観点からは、これらの条件下では、漆器のエッジ部分で最も付着力が低下し、破損し易くなるという結論を得た。