ＥＰＭＡによる漆塗膜の観察

漆は古代から使われてきた天然塗料であり、その用途の代表である漆器はその独特の美しさと耐久性の良さから現在も使用されている。その我々に馴染みのある漆も塗膜構造や硬化反応機構は非常に複雑で、まだまだ解明されていない部分も多い。今回の実験では、硬化漆塗膜を最新のＥＰＭＡで分析し、蛍光Ｘ線分析装置、窒素/タンパク分析装置の分析結果と併せて比較、考察した。そして塗膜中に分散するゴム質の粒子とその周辺部で含有元素の分布を調べた結果、硬化反応時に形成される２価の金属錯体の存在の推定や硬化反応に関係する酵素に含まれる銅、窒素原子の非局在化の傾向を知ることができた。またゴム粒子の単相構造や塗膜構造の深さや方向の推察をすることができた。