輸出漆器の修理材料の分析（1）（2）

江戸時代を中心に日本から輸出された漆芸品は,海外の博物館の収蔵品という形で保存されているものも多い。このような漆芸品のうち損傷の顕著のものが在外日本古美術品保存修復事業の対象として,昨年度から修復措置を施されているが,これらの漆芸品の多くは既に輸出先でいろいろな材料や技法により独自の修理を施されていた。その材料や方法は,修理報告書などに記録されていない場合もあり,材料や技法を明らかにすることが事業上,強く求められている。この点について修復技術部の中長期計画により「近世輸出工芸品の実証的研究」として研究計画がたてられており,それに基ずいて今回,二点の漆芸品の修理材料について分析を行ったので,ここに報告する。