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題名
Title

近世出土漆器椀の用材に関する一考察

掲載文献名
Publication title
考古学と自然科学:38.47-66
発行所
Publisher
日本文化財科学会
発行年
Publish Date
2000
分類
Type
論文
言語
Language
所蔵者
Location
著者
Author
北野信彦
概要
Summary

近世出土例が急増している近世漆器椀は,数量の膨大さとともに「木胎」「下地」「漆塗膜面」という異なる素材からなる脆弱な複合遺物であるため,取り扱いに苦慮する場合が多い。これらを観察すると,個々の破損の主な原因の一つとして木胎部の変形・収縮とそれに伴う漆膜面の剥離・剥落現象があげられる。これらの取り扱いを的確に行うには,まず個々の資料の組成を正確に把握する必要がある。通常,漆器椀などの挽き物類の木胎は,まず樵師が原木をある程度の寸法に切り出して荒型をつくり,その後何段階かの工程を経て最終的には木地師がろくろ成型をして仕上げる。近世とりわけ江戸時代の木地師らの活動に関する調査は,文献史学や民俗学の分野で多くの研究成果がある。しかし,実際の漆器資料を自然科学的手法を用いて分析し,その調査結果の蓄積から江戸時代の用材利用の在り方を考察する研究は,一部の断片的な樹種同定結果が存在するだけで,実体には不詳な点が極めて多い。本稿では,このような近世出土漆器と,参考資料としての同時代の伝世漆器(民具資料)の用材(ここでは材質である樹種,製法である木取り方法)に関する調査を行い,資料の蓄積を得たので結果を報告する。

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