有機ケイ素化合物を用いた速乾性ハイブリッド漆塗料の開発

漆液の乾燥はラッカーゼ酵素によるウルシオールの酸化重合とウルシオール不飽和側鎖の自動酸化反応で進行する。その塗膜は美しい光沢を有し，また硬度と耐久性は一般の合成塗料と比べて優れている。酵素酸化重合においては，酵素反応を活性化するために70～80％RH程度の高湿度環境を必要とする。そのため工業的なライン塗装の障害となっており，また自動酸化もゆっくりと進行するため，全体的に乾燥が遅いといった問題がある。本研究においては，有機ケイ素化合物を漆液に添加することでウルシオールと反応させ（Scheme)，有機ケイ素ーウルシオールオリゴマーを生成させることで漆液に速乾性と低湿度環境における乾燥性を付与することを検討した。またこのように調整したハイブリッド漆について物性を検討したので報告する。